厳寒の夜を過ぎると、朝陽が真っ白に化粧した街を照らす。
夜半のシンシンとした静けさに合点がいく。
私は雪化粧した街を歩くのが好きです。
寒くとも空気が清純で、陽に反射する白光が、無垢の心を呼び起こす。
私にだって、きっとそういった心の地があったのだ。
気がつけば、影が、ながーく、田圃に写っている。
影はいつも私とともにあった。
待てよ、影だって私なのだ。
白に映える黒い影は、漆黒なほど味わい深い。
私は、腕を感じ、脚を感じ、胸を背中をそしてお腹を感じる。
そして影を感じる。
こんなふうに影を捉えたことはなかった。
稽古の時、存在するものを感じようと思っていた。そうではなかった。
ないものも含めた自分の輪郭をただ観察して、その感じを言葉で形容するだけなのだ。
ただそれだけの行為だが、集注が訪れる。
ないものであるはずの影は無味乾燥のようだが、耳を澄ませば何かモグモグ呟いている。
過去がゆっくりとブクブク浮き上がってくる。
あるものとないもの、二つで成り立つ生命。
影を濃くすれば濃くするほど、あるものはくっきり際立つ。
漆黒の闇でも、見えなくとも影は消えていない。
古典人は自身の身体で写される影に何かを感じていた。
現代人に無用の、そこに観る、自身から繋がる過去の歴史。
雪の白さは、清々しいくらいの寒さは、影を気づかせ、自分が一人では存在し得ないということを改めて感じとらせてくれた。
初詣でみる手を合わせる人々の姿。
喧騒。
そこにあるのは、祈願ではなく、生まれてきたことへの感謝なのではないかと見紛う年明けだ。
2026.1.3 Sosuke.Imaeda