理学療法士 宮本清隆氏
臨床経験28年。発達障害児のリハビリテーションに携わる傍ら、セミナー講師、専門誌への論文掲載、学会発表など多方面で活動。
私は小児理学療法士として28年間、発達障害のある子どもたちのリハビリテーションに携わってきました。これまでセミナー講師、専門誌への論文掲載、学会発表などを行ってきました。
臨床では「評価」が重要だと言われます。理学療法士は観察を通して対象児を理解し、介入し、その変化を評価します。しかし、小児の臨床では、それ以前に越えなければならない大きな壁があります。
それは、「子どもに受け入れてもらうこと」です。
大人は理学療法士の役割を理解し、治療を受けることに同意できます。しかし子どもにとって、見知らぬ大人が近づき、自分の身体に触れ、動かされることは本能的な恐怖であり、防衛反応として泣いたり逃げたりすることは自然な反応です。
さらに言えば、対象児の障害が重度であるほど、彼らが今「痛いのか」「心地よいのか」「身体が軽くなったのか」といった内面を、言葉で直接聞くことはできません。だからこそ、 理学療法士には、客観的な観察だけでなく、自分自身の身体感覚を鋭敏に保ち、その共鳴を通じて相手の抱える微細な感覚を汲み取る能力が不可欠です。
だからこそ、小児理学療法では、動かす技術以前に、「どう近づくか」「どう視線を向けるか」「どう声をかけるか」「どう触れるか」が極めて重要になります。私は長年、その答えを探し続けてきました。
その中で出会ったのが、本駒込稽古場で今枝氏が指導されている身体技法でした。
稽古では、単なる身体操作ではなく、自分自身の身体感覚を観察する「内観」を学びます。私がこの技法に強く惹かれたのは、理学療法士がこれまで培ってきた「観察による認知領域」の理解に加え、身体感覚を介した「非認知領域」の情報が統合されることで、相手をより立体的に理解できるようになった点にあります。
相手を評価するだけではなく、自分の身体に生じる微細な変化を感じ取り、その関係性から相手を理解していく。この発想は、従来の理学療法教育にはほとんど存在しないものです。この「認知」と「非認知」の両輪が揃ったことで、私の臨床の景色は一変しました。
私はこの学びを臨床へ取り入れ、新人教育や理学療法士向けセミナーでも紹介してきました。参加者や職場スタッフの変化を見てきた経験からも、この身体感覚に基づく技法は、理学療法士にとって重要な基礎となり得ると確信しています。
もちろん、この技術は簡単には身につきません。私自身、20年近く稽古を続けていますが、今なお学びの途中です。それでも毎月稽古場へ通い続けるのは、それだけ臨床に還元される価値を実感しているからです。
現在、この分野は十分に科学的に整理されているとは言えません。しかし、臨床では科学だけでは説明しきれない現象に日々出会います。その時、自分自身の身体を通して相手を理解するという視点は、確実に臨床の幅を広げてくれました。
もし、理学療法士として今の臨床をもう一歩深めたい、自分の身体そのものを治療の道具として磨きたいと考えるなら、私は今枝氏の稽古会を心からお勧めします。
技術を学ぶ場であると同時に、自分自身を学ぶ場でもあるからです。
私はぜひ医療従事者に内観的身体技法を習得していってもらいたいと願っています。
2026/6/29
【庵主 今枝壮介より】
宮本先生、過分なお言葉をいただき大変恐縮です。毎月の稽古の中で、宮本様がご自身の身体と真摯に向き合い、それを臨床の場で子供たちのために還元されている姿には、私も日々大きな刺激をただいております。経歴28年のプロフェッショナルが新たな学びのために、繁忙の中、稽古においでいたくことは私としても身が引き締まる思いです。これからも人間の根源的な身体性を探究する場としておいでをお待ちしております。