本駒込稽古場 庵主ご挨拶

 

 このページは本駒込稽古場の庵主であり講師である私がどんな人なのかを書くところなのですが、これまで何度書き直しても「なんだかな〜」という感じで、なんとも自分のことを書くのは難しいものだと感じている次第です。

 いや、そもそも私は私のことを知っているつもりで、実は何にも知らないのかもしれません。

 他者から見た私。それはとても悍ましい光景ではあります。考えたくはありません。つまりそう言っている限り、考えてしまっているのでしょう。

 

 たとえばフランス料理店で食事する時(私はまず参りませんが)、そこがどんな由緒を持っていて、シェフがどんなポリシーで幾多の賞を受賞されていて、ミシュランの星が幾つで、何が看板料理で、料理方法が精緻で、グルメサイトの評判がどうでと知って食してしまえば、私はまず食事を素直に味わえないのです。ウンタラカンタラが美味しいと言われでば、きっとそれに対する評価になってしまうし、高いお金を払ってパリまで行ったなら(まずいくことはないと思いますが)自分の出費を考えて、損したと思いたくはないわけで、店の選択や味への忖度は間違いありません。ましてや他者と一緒に食すれば、自分事の冷静さはどこへやら、お前、静寂と求めお茶の稽古してたんじゃないかと自分にツッコミを入れたくなる次第であります。

 と、長々書いてしまいましたが、つまり、このページで私の履歴書情報は本当はない方が、稽古をする方は素直に自分に向き合えるのではないかと思っている節が自分にあって、そうなことを思うと尚更何を書いていいいのかと思ってしまうのです。

 ただ、晴風学舎という未来の日本の身体文化を作っていく最も期待される若々しい組織で、技術研究員(稽古場を開いて指導者として活動してもよいというお墨付き)という取得がとても難しい資格をいただいておりますので、怪しいものではありません。そこはご安心下さい。

 

 先日、私の師匠である野口裕之先生のいつもながらの圧倒的な素晴らしい動法稽古(私はこれをチャンピオンファイトと勝手に読んでいます)の後

 【余談になりますが、日本動法を語れるのは、その文化を脇目も振らず研究し、身体により理(ことわり)化、実証されてきた名付け親である野口裕之先生以外いらっしゃらないと確信しております。】

 

 さて、狛江駅までいくと、ホームの座席でニコニコと笑顔を向けておられる感じのいいご婦人がおいででした。

 私は稽古着(着物に袴)を着ていて、この時間なのだから、きっと稽古された方だと思い

 「すみません、気難しい顔してて、どうも目が悪いので、ご挨拶がいつも遅れてしまいがちで」といつもながらのパッとしない言い訳モードで会話が始まりました。(私は初対面の印象がかなり悪いらしいのです。あくまで初対面だけでございますが。念のため)

 私にはあのような屈託のない笑顔ができない。きっと子供の頃はそんなことはなかったと思うのですが。今だって気づかぬままに自然に笑っているのだとは思ってはおりますが。

 でもでもです。普段は、特に社会に出ている時には、私の頬は硬いのです。社会の荒波にもまれ、そうなってしまったとちょっぴり言い訳モードであります。あんたの波はそれほどの荒波だったのかというツッコミもあるかと思います、どうかそこはご勘弁お願いいたします。

 

 で、結局このページで何を言いたいのかといいますと、私はなるべく無名人になって、来られる方もなるべく無名人になられて、社会を忘れて、世俗を剥ぎ取って丸ごとの身体を感じてもらいたい私がいるということです。

 そんなことなんの役に立つのかとまたまたつっこまれそうですが、たまには無色人間になることも乙なものでございます。

 きっとそれは精神の世界の話だとお思いになるかもしれません。でも実は体にべったりと纏わりついているものが人間を包み隠しているやにも思えるのです。

 

 心と身体は一体なのでございます。

 

 稽古により視野が変われば、現実と(思われている)世界が変わらなくても。新しい景色が立ち現れてくるやもしれません。

 

 そんな稽古をしたいと思っている無名人でございます。

 

 そして「一期一会」の出会となれば、素晴らしいと思うのです。何度お会いしても、一回いっかいがはじめての出会のように稽古できればと思っているのです。

 「来るものを拒まず、去るもの追わず」

 門を叩いていただける方、ご縁のある方の心を大切にしたいと思っております。

 もちろん、後を濁さず去っていかれることもご自由です。

 

 まだまだ勉強途上ではございますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

 【ご参考】晴風学舎には全国に70以上の稽古場があり、その他の公民館などでも頻繁に動法稽古会を行なっております。由緒ある稽古場から新たな稽古場まで目指すところは一つといえどもその特色や稽古法はまちまちです。ご自身のライフスタイル、ご希望に合わせた稽古をされることをお勧めいたします。

 

本駒込稽古場 庵主 今枝壮介

 

2026/7/16